規格外野菜とは、形や大きさの不揃いなどの外的要因によって、市場出荷における規定の出荷基準を満たさなかった農産物を指します。品質や味には問題ないにもかかわらず、見た目だけで出荷ができないため、多くが廃棄されてしまうのが現状です。
近年、フードロス削減への関心が高まる中、規格外野菜の廃棄量も大きな課題となっています。農林水産省によると、2020年度の規格外野菜の年間廃棄量は約200万トンに達し、これは全収穫量の約6%にあたります。

見た目だけで捨てられてしまう農作物がこれほど存在する一方で、近年では規格外野菜を活用した取り組みも増えています。規格外野菜を低価格で販売するスーパーや、規格外野菜を使った加工食品を開発する企業など、様々な取り組みが行われています。
この記事では、規格外野菜の現状と課題、そして今後の展望について詳しく解説していきます。
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- 規格外野菜の年間廃棄量はどのくらい?
- 規格外野菜削減の為の対策
- 規格外野菜の廃棄を削減する為の取り組み
- 規格外野菜に関する今後の課題
規格外野菜の年間廃棄量はどのくらい?
では一体、規格外野菜はどのくらいの量が年間で創出されるのでしょうか。結論からお伝えすると、200万トン近くの規格外野菜の廃棄が生まれていると推察されます。
実は規格外野菜の廃棄量について正確な統計はありません。ただ、日本国内の収穫量に対して流通に乗らなかった野菜の量から推察することができます。
2022年時点での、収穫量は1,284tに対して出荷量は1,113万tという着地になっています。ここから流通に乗らない野菜が170万tあることがわかります。

▼参考資料
作物統計調査 / 作況調査(野菜) 確報 令和4年産野菜生産出荷統計
規格外品と聞くと味や品質に欠陥があるのでは?という印象が多いようですが、多くは形や大きさ、変色といった外的要因に起因する理由によるものです。食べることが出来るにも関わらず廃棄されてしまう野菜が年間200万トン以上も産出されているというのが現状なのです。
規格外野菜への対策
年間200万トン以上が廃棄されている規格外野菜ですが、もちろん問題意識をもって、有効活用出来ないかという取り組みも行われています。
- 対策法①|規格外野菜の販売
- 対策法②|加工品の原料としての活用
- 対策法③|家庭での消費
- 対策法④|規格の見直し
対策法①|規格外野菜の販売
規格外野菜だからといって、必ずしも販売できないわけではありません。
市場に出荷される野菜は、原則として規定の規格を満たさない限りは出荷できませんが、市場流通 以外 の手段を利用した販売においては、規格外野菜も販売 することが 可能 です。
では、どのような販売手段が該当するのでしょうか。具体的な事例として以下のような販路が想定されます。
- 道の駅等での販売
- 農家さんの持つECサイトを通じた販売
- 軒先販売
- 産直サービスを利用した販売
- 飲食店への直接販売
特に近年では、自分たちでオンラインサイトを立ち上げる農家さんや、規格外野菜に焦点を当てた産直サービスも登場し、以前よりは規格外野菜の販売経路は拡大しているようです。
対策法②|加工品の原料としての活用
次に、加工品の原料としての活用という手段があります。身近な加工品としての例を挙げると、ジュース、アイスクリーム、ジャムや調味料といった物が挙げられます。
近年では規格外野菜のみにフォーカスを当てた加工品のブランド等も登場を見せており、規格外野菜の廃棄量減少への感心の高まりが感じられます。
対策法③|家庭での消費
続いては、家庭での消費です。対策法①で挙げた通り、消費者も規格外野菜を購入することができことができます。
フードロス削減への関心が高まる近年では、家庭での消費にも規格外野菜を活用しようという意識の消費者も増えています。特にコロナ渦を経て、多くの消費者がECサイトを通じた農産物の購入を利用するようになりました。
このような中で、より一般化したECサイトでの規格外野菜の購入需要も高まり、家庭での消費量も増加を見せています。
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対策法④|規格の見直し
そして四つ目の対策法として、規格の見直しが挙げられます。
農産物の出荷規格においては様々な選別の規格が定められています。規格改定のメリットとして、以下の2点が挙げられます。
- 細分化されていた規格段階を統合、簡素化する事で選果に係す労力を削減できる
- 選果基準が大まかになったことで規格外野菜の量が減る
そもそもの規格の見直しをすることで、規格外野菜を減らすことができます。
規格外野菜に関する取り組み事例
規格外野菜に関する取り組み事例についてここでは紹介していきます。
- 事例①|規格外野菜から生まれる「おやさいクレヨン」
- 事例②|廃棄を減らして、美味しいを増やすアイスクリーム「n!ce cream(ナイスクリーム)」
- 事例③|ロスが減る地球に優しい定期便「ロスヘル」
- 事例④|JTBより誕生した、ロスを減らす缶詰「ロス旅缶」
- 事例⑤|規格外野菜がキャラクターに⁉「キャラべジ」
事例①|規格外野菜から生まれる「おやさいクレヨン」

廃棄寸前のお野菜を活用して作られるクレヨンがあるのをご存じでしょうか?
規格外野菜と米油を使用して作られるのが「おやさいクレヨン」。
万が一子供が誤って口に入れてしまっても大丈夫な安全性を持ちながら、廃棄野菜を減らしているこの製品は日本人のグラフィックデザイナーである木村尚子さんによって生み出されました。原材料が醸し出す色彩やその製品背景から、環境問題を学ぶきっかけにもなる素敵な活用方法ですね。
事例②|廃棄を減らして、美味しいを増やすアイスクリーム「n!ce cream(ナイスクリーム)」

こちらでご紹介するのは、規格外野菜や果物を使用したアイスクリームブランド、「n!ce cream(ナイスクリーム)」。
もったいないを減らし、美味しいを増やすをコンセプトに、材料となる野菜や果物はもちろん、アイスクリームに使用するミルクには過剰搾乳による余剰生乳を使用し、ミルクにおいてももったいないを減らすことを可能にしたサステナブルアイスクリームブランドです。
事例③|ロスが減る地球に優しい定期便「ロスヘル」

全国各地の農家から規格外野菜を調達し、定期便として一般的なスーパーで販売される野菜の価格よりも安価に提供するサービス、「ロスヘル」。
規格外野菜の廃棄を減らすという事はもちろん、過剰梱包を減らす取り組みにも尽力しています。リサイクルしやすい段ボールを使用したり、緩衝材には廃段ボールを再利用したもの、ビニール資材を使用するのではなく古新聞を再利用するなどの環境面への配慮にも取り組まれています。
事例④|JTBより誕生した、ロスを減らす缶詰「ロス旅缶」

「ロス旅缶」とは規格外野菜をSDGsへ積極的に取り組むホテルのシェフがレシピ考案をした缶詰です。
こちらはJTBの食品ロス削減の共創プロジェクトの始動に伴って開発された商品。
賞味期限が二年以上持つ缶詰にすることで、多く輩出されてしまう規格外野菜を加工後もロスになるリスクを軽減することを実現しています。
事例⑤|規格外野菜がキャラクターに⁉「キャラべジ」

「キャラべジ」とは様々な形をした規格外野菜にお茶目な顔のパーツがデザインされたシールを貼り付けて個性を加えることで、規格外野菜そのもののらしさを楽しんでもらいながら購入し、食べてもらう事を目的とした企画です。
キャラべジは規格外野菜に顔のパーツのシールを貼る事で、まるで野菜がキャラクターの様になるという楽しさもあり、ファミリー層から注目を集めました。
自分の好きなようにキャラクターを生み出すことで湧いた愛着を切り口に、規格外野菜についてお子さんと学ぶきっかけにもなっているそうです。
規格外野菜に関する今後の課題
規格外野菜の廃棄に関する問題を解決しようとする動きは近年活発になっています。しかし、それでも依然として課題が残っている現状です。そこでここでは規格外野菜に関する課題について3つ紹介していきます。
- 課題①|需要と共有の問題
- 課題②|生産者さんのリテラシー
- 課題③|加工設備が少ない
課題①|需要と共有の問題
通常スーパーなどに並ぶ野菜よりも安価で購入出来るのであれば、むしろ規格外野菜を購入したいという消費者が増えたとしましょう。規格外品の売れ行きが上がる一方で、その需要に反して正規品の売り上げが減少するという問題があります。
安価な規格外品ばかりが売れてしまうと、農家さんの収益が減少してしまうといった問題が出てきてしまう可能性があるのです。
課題②|生産者さんのリテラシー
また、近年ではオンラインサイトも独自に簡単に立ち上げられるサービスが発達してきました。しかし、全ての生産者がそのサービスを使いこなせるというわけではありません。
設備の問題や操作等においては高齢の生産者や小規模生産者にとっては難しいといった面もあります。
課題③|加工設備が少ない
加工品として活用する、といった方法においても、独自に加工設備を持った生産者もいればそうでない場合もあります。
加工設備を増設するための費用を捻出するよりも廃棄に回してしまった方が安価であるといった場合や、そもそも加工施設との繋がりや地域での加工場不足などの問題があるため、全ての生産者において、簡単に加工に回せばいいとも言えないのが現状です。
まとめ
今回は、規格外野菜とはどういったものなのか、そしてその対策法等について見てきました。
以前に比べれば、規格外野菜が廃棄されてしまうといった他の活用方法が現れているといった反面、まだまだ課題もあるのが現実です。
規格外品の量は気象等によっても左右される問題でもあるため、一概に廃棄をなくすという事には限度があるにせよ、少しでも食べられる農産物が何らかの形で有効活用される機会が増えていく事が望ましいですね。