「食」は、子どもたちの成長に欠かせないものです。何をどのように食べるかによって、体の健康だけでなく、心の成長にも大きな影響を与えます。しかし、現代社会では、食を取り巻く環境は複雑化し、子どもたちの食習慣も変化しています。
ただ「食育って難しそう…」そんな風に思っていませんか?実は、毎日の食事の中にも食育のヒントはたくさん隠されています。
この記事では、そんな現代における食育の重要性と、具体的な取り組み方についてご紹介します。保育園での実践事例や、ご家庭でできる簡単な食育のアイデアまで、幅広く解説します。食育を通して、子どもたちに健やかな未来をプレゼントしませんか?
- 食育のねらいとは?
- 食育基本法とは?
- 食育の大切さがわかるポイント 3つ
- 食育の大切さを伝える方法5つ 保育園での取り組み事例5つ
食育のねらいとは?
「食育」という言葉は、よく耳にするようになりました。でも、具体的に食育とは何なのでしょうか。
食育は、単に栄養バランスの良い食事を摂ることだけを指すのではありません。食に関する知識を身につけ、自ら食を選択し、食を大切にする心を育むこと、つまり「食べる力」を育むことが目的です。
食育基本法では、食育の目的を「食に関する知識を習得し、自ら食を選択する力を高め、食を大切にする心を育む」と定めています。これは、子どもたちが健やかに成長し、豊かな人生を送るために不可欠なことです。
例えば、保育園で旬の野菜を育て、収穫して食べる体験を通して、子どもたちは「命の大切さ」や「食への感謝」を学ぶことができます。また、家庭で一緒に料理をすることで、子どもたちは料理の楽しさや、食事を作る人の気持ちを理解し、食事の大切さを実感できるでしょう。
食育は、単に子どもの健康のためだけでなく、心も豊かに育むための大切な取り組みです。食を通して、子どもたちは社会性を育み、生きる力を身につけることができます。ぜひ、ご家庭や保育園で食育を取り入れて、子どもたちの健やかな成長を応援しましょう。
食育基本法とは?
近年、現在も子どもの偏った栄養摂取、朝食欠食など食生活の乱れや肥満・痩身傾向など、健やかな成長と健康を取り巻く問題が深刻化しています。
こうした問題を解決すべく、食育基本法は制定されました。
同法では、食育の目的を以下の3つに定めています。
- 「食」に関する知識をつける
- 「食」を選択する力を習得する
- 「食」を大切にする心情を育む
「食」に関する知識をつける
「食に関する知識をつける」とは、単に栄養成分を覚えるだけでなく、食べ物がどのように作られ、私たちの体の中でどのように利用されるのかといった、より深い知識を身につけることです。例えば、白米に含まれる糖質が体力を与えてくれることや、野菜に含まれるビタミンが体の抵抗力を高めることなどを理解することで、食に対する興味関心を深めることができます。
「食」を選択する力を習得する
「食を選択する力」とは、様々な食品の中から、自分の健康状態や生活習慣に合わせて、適切な食品を選ぶことができる力です。例えば、成長期の子どもは、カルシウムを多く含む牛乳や乳製品を積極的に選ぶ、といったように、自分の状況に合わせて食を選ぶことができるようになります。

「食」を大切にする心情を育む
「食を大切にする心情」とは、食への感謝の気持ちを持ち、食に関わる人々への思いやりを持つことです。例えば、食事の前に「いただきます」と言うことや、残さずに食べること、食材を無駄にしないことなどが、食を大切にする心の表れです。また、食を通して、家族や友達とのコミュニケーションを深め、食卓を囲むことの楽しさを味わうことも大切です。

また厚生労働省HPでは保育所での食育に関する指針の公開しています。楽しく食べる子どもに~保育所における食育に関する指針 – 厚生労働省
食育の大切さがわかるポイント 3つ

「食育」は大切ということをなんとなく分かっていただけたと思いますが、例えば「栄養バランスの取れた食事が大切」ということを知ってはいても、なかなかどう大切なのかがわからないと感じる方も多いのではないでしょうか。
ここでは「食育」がどう日常生活と結びつくのかご紹介し、食育が重要視される理由を解説していきます。
- ポイント①|健康的な生活を送る
- ポイント②|学力や体力を向上させる
- ポイント③|正しい食事マナーが身につく
ポイント①|健康的な生活を送る
「食育」を通して、何を食べれば健康につながるかを学ぶことができます。事実として、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事をしている人は、不足する栄養分が少なく、健康的であるとのデータが報告されています。また、野菜類や豆類をよく食べ、肉類の接種が少ない人は胃がん・大腸がん・糖尿病などの発症リスクが低い研究結果もあるため、病気予防としても効果的です。
こうした健康的な食生活は病気によるリスクが低く、健康をキープすることに加え、長寿とも関係するといわれています。大きな病気にかかることなく、元気に生きていくためにも栄養バランスの整った食事が大切です。

ポイント②|学力や体力を向上させる
「食育」の考えを食習慣に活かせば、子どもの学力・体力向上にも貢献してくれます。子どもが健やかに成長するには、よく食べて、よく眠ることが重要。しかし、年齢が上がるにつれて、食事の栄養バランスが乱れたり、朝ご飯を食べずに学校に行ったりする子どもが増えています。
また健康的な食習慣は学力にも影響を及ぼすとされています。文部科学省が実施した「全国学力・学習状況調査」によると、朝ご飯を食べない子どもより、食べる子どものほうが平均学力が高いという結果が。また「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」においても、朝ご飯を食べる子どものほうが体力合計点が高くなっているそうです。
学力や体力は子どもの将来にもかかわるため、「食育」を定期的に実施し、子どもたちが自ら健康的な食習慣を選択できるようにしっかりと伝えていくことが大切です。

ポイント③|正しい食事マナーが身につく
「食育」には正しい食事マナーに関する知識も含まれます。「いただきます」「ごちそうさま」といった挨拶だけでなく、箸の持ち方やお椀の持ち方など、食事マナーはいくつもありますよね。
食育の実施によって家族や保育者と一緒にご飯を食べていれば、子どもは大人の食べ方から食事マナーを見て学ぶことが可能です。最初はうまくできずに失敗していても、叱らずに見守ってあげましょう。できたことをほめてあげれば、自然と正しいマナーも身に付きます。
食事マナーは大人になってから矯正することが難しいといえます。子どものころから身に着けておけば、大人になったときに困ることもありません。

食育の大切さを伝える方法5つ
「食育」の大切さを理解し、日常生活に必要な食育活動のイメージが湧いてきましたでしょうか。しかし、実際に園や家庭で行うといっても何をしたらいいのか悩む方が多いと思います。
ここでは全国各所の保育園で実際に行われた事例をご紹介し、活動を深めるために注目したいポイントをお伝えします。
- 方法①|絵本の読み聞かせ
- 方法②|食育ゲーム
- 方法③|廃棄食材を使った工作
- 方法④|園内栽培
- 方法⑤|ワークショップ
方法①|絵本の読み聞かせ
手軽に始められる食育として、絵本の読み聞かせがおすすめです。食べ物や料理をテーマにした絵本を読み聞かせすることで、食への興味を引き出すことができます。ちょっと難しい食べ物の栄養やマナーも、絵本だったらスムーズに心の中へ入っていきます。一人で読む、親子で一緒に読む、園でみんなと一緒に読む、発達段階やシチュエーションに合わせて、「食」について楽しく学べる絵本を選びましょう。

方法②|食育ゲーム
クイズやカードゲームなど、楽しみながら食に関する知識を学べるゲームを取り入れるのも一つです。給食や家庭で普段目にしている食材や献立を中心に、ゲームを考えてみましょう。「名前あてクイズ」「ビンゴゲーム」などは、実物を見たことがある食材を中心に教材を手作りすると、子どもたちの中にすでに具体的なイメージがあるので積極的に取り組みやすくなるでしょう。ルールがシンプルなので、教材はとても簡単に作成することができます。

方法③|廃棄食材を使った工作
調理過程で生まれる、ヘタや皮などの端野菜を使った工作であれば、食べ物の形や色、においなどを五感で感じることができます。「野菜スタンプ」「色水」遊びは、手軽にできるのでおすすめです。料理以外の活用方法を考えること、食材の特徴を知ること、体験を通して学ぶことができます。多くの準備と手間が必要になりますが、玉ねぎの皮などを活用した「野菜染め」も、食べ物を大切にするという観点から、食育活動としておすすめです。

方法④|園内栽培
保育園での野菜栽培は、子どもたちが植物とふれあい、豊かな心を育むことを目的としています。自分たちでお世話をしたり、いつも調理された状態でしか見ない野菜がどういう過程で育っていくのか見て知ることが重要です。私たちが口にする食事の裏には、一生懸命野菜を育てた「人」がいるのだと気づくことにつながるでしょう。園内栽培を通して、より食べ物の大切さや命の尊さを学ぶことができます。

方法⑤|ワークショップ
もし依頼が可能であれば、外部から講師を呼んで、専門家によるワークショップを開催し、普段はできないような体験を園内で行うことができます。
季節の食材を使った料理教室や、ワークシートを用いた献立作り、園児だけでなく親子で体験する食育教室など、子どもたちの知見を広げる良い機会になります。

食育を通して食事の大切さを子どもに伝えるときは、「食事は元気に遊ぶために大切だと」といった風に、わかりやすい言葉を使いましょう。何を言えばいいのかと難しく考える必要はありません。「たくさん食べれば元気に遊べるよ」といった子どもでもイメージがしやすい簡単な言葉を伝えてあげましょう。
保育園での取り組み事例5つ
「食育」は、給食などの時間を活用して日頃から取り組まれている園も多いのではないでしょうか。
さらに実践を広げたい、他園の活動が気になるという保育者様へ、実際の事例を5つご紹介します。
- 事例①|園内栽培
- 事例②|紙芝居
- 事例③|ちいさな畑
- 事例④|クッキングプログラム
- 事例⑤|浅漬け作り
事例①|園内栽培
さくらぎ保育園では園内にある畑で4.5歳の園児が野菜の栽培を行っています。園庭で野菜を育てる事で、自然の野菜と直に触れ、その成長を日々観察する事ができます。
土に触れ、葉や根や実の香りを確かめたりするとは、子どもたちとっても貴重な機会になっています。その後、自分が育てた野菜を調理したり、給食に入っている事も食への強い関心に繋がっているそうです。

事例②|紙芝居
慶光保育園では、食育紙芝居の読み聞かせ活動を行っています。紙芝居は少し特別感もあり、子どもたちも楽しんで食育に取り組む事ができるでしょう。また紙芝居は手作りすることもできる為、手軽に取り入れる事ができます。
紙芝居のような大きなイラストとシンプルなストーリーは、食の大切さを分かりやすく伝えるのにとても有効です。

尚、大分県ではオリジナルストーリーの食育絵本の貸し出しも行っています。
事例③|ちいさな畑
認定こども園錦ヶ丘では、園内の空きスペースに小さな畑を作ることにしました。最初はSDGs活動の一環として、自分たちで作った野菜をクッキングするという目標のもとスタートしたんだとか。一度に行けるのは4〜5人程度ですが、園内にあることで自分の手で植えた大切な苗の成長を見届けることができ、子どもたちも愛情たっぷり、心こめてお世話をしています。

事例④|クッキングプログラム
こどもおりょうりラボではスクーリングだけでなく、保育園での出前授業(保育園親子イベント)を行っています。食育に特化したクッキングプログラムで、季節の食材を使った料理や発酵食品を親子で作り、日本や世界の食文化の素晴らしさを伝える活動を行っています。

事例⑤|浅漬け作り
漬物は日本人にとって大切な食べ物であり、多くの方にとって子どもの頃から親しみ食品の一つです。
国分寺Jキッズステーションでは旬の野菜を使った浅漬け作りました。生の野菜に塩などの調味料を入れると水分が出るという過程は子どもの興味・関心を高めます。
また苦手な野菜を自分の手で調理することで、美味しく食べれるようになることもあります。簡単な浅漬けづくりを通して、食の旬に関心を持ち、食の楽しさを体験することができます。

園でもご家庭でもできる!食育への取り組み方法 3つ
食育を学べる場は保育園だけではありません。
家庭でもできることから始めて、ご家族で食育への理解を深めることもできます。
ここでは子どもの生活の中で体験できる食育活動を紹介します。
- 方法①|一緒に買い物をする
- 方法②|一緒にごはんを作る
- 方法③|苦手なものでも一口食べるよう伝える
方法①|一緒に買い物をする
子どもと一緒に買い物に行けば、野菜や果物、魚などの知識を深められます。スーパーにはさまざまな食材があるので、子どもと一緒に見ながら「今日は何にしようか」と献立を考えてみても良いでしょう。その際には季節の食材を探してみたり、子どもが興味を持った食材を使った料理を提案してみると、その食材がどのように調理されるのかの想像が膨らむかもしれません。
食材へ興味を持つことも、食育の大切なポイントです。タイミングが合うときは一緒に出掛けてみましょう。

方法②|一緒にごはんを作る
子どもと一緒にご飯を作ることで、普段食べている料理がどのようにしてできているのかを教えることができます。
まずは「入れる」「混ぜる」ことなどから始めてみましょう。次第に慣れてきたら、切る、焼く、煮るとスモールステップで教えていくことで、子どもは成功体験を積みやすくなります。一度成功すれば2回目の調理も積極的に参加してくれるので、料理好きな子どもになるかもしれません。
家庭で食育に取り組む際は、一緒に楽しむことがポイント。料理の楽しさを通じて、効果的な食育を実施することができます。

方法③|苦手なものでも一口食べるよう伝える
食卓に食事を並べた時「一口も食べてくれない」ということに悩まれている方も多いのではないでしょうか。ただそういう状況であっても、一口だけは食べてみるように伝えましょう。むしろ食わず嫌いであれば、一口食べることで味を知り、好きな食べ物に変わるかもしれません。どうしても苦手な場合は、なぜ苦手なのかを聞いてみることも大切です。お子さまにとってすれば、苦手と感じる気持ちを言葉にしてみることで気持ちに折り合いがつく、さらに食材について関心を持つことにもつながっていくでしょう。
もし苦手な理由を聞いたら、理由を解消できる方法を一緒に考えてみましょう。工夫することでおいしく食べられると伝えれば、子どもも苦手意識を持たずにチャレンジできます。
苦手な食べ物でも、一口食べてみることを促すことで、新しい味に挑戦する経験を積ませましょう。

まとめ
「食育」は、子どもたちの健やかな成長を支える大切な取り組みです。この記事では、食に関する知識や、遊び感覚で取り組める食育のアイデアをご紹介しました。保育園での野菜作りや、家庭での料理体験など、子どもたちが自ら食に関わることで、食の大切さや楽しさを実感できます。ぜひ、ご家庭や保育園で、食育を取り入れてみませんか?子どもたちの「食べる力」を育み、笑顔あふれる食卓を作りましょう!