近年、貧困や孤食など、子どもを取り巻く社会課題への対応として、こども食堂の重要性が高まっています。こども食堂は、子どもたちに食事を提供するだけでなく、地域のコミュニティの場としての役割も担っています。
この活動は、SDGs(持続可能な開発目標)の理念と深く結びついており、特に以下の目標との関連性が強いと言えます。
- 目標1:貧困をなくそう
- 目標2:飢餓をゼロに
- 目標3:すべての人に健康と福祉を
- 目標10:人や国の不平等をなくそう
- 目標17:パートナーシップで目標を達成しよう
こども食堂はこれらの目標達成に貢献するだけでなく、多世代交流・地域のコミュニティスペースとしても機能し、SDGsの理念を地域社会により広める役割も期待されています。
- 子ども食堂の活動目的
- 子ども食堂とSDGsの関係性と影響
- 子ども食堂におけるSDGsを意識した取組み事例
こども食堂とは
こども食堂とは、子どもたちに無料または低額で栄養のある食事を提供する取り組みです。
子ども食堂の始まりは、2012年に東京都大田区の「気まぐれ八百屋だんだん」の店主である近藤博子さんが、店の一角に「だんだんこども食堂」を開設したことによります。
その後、経済的な困難を抱える家庭の子どもや、一人で食事をする子どもたちに、無料または安価で栄養バランスの取れた食事を提供する場として、急速に全国各地へ広まっていきました。
食事支援の他にも、学習支援や地域住民との交流など、様々な活動を通して、子どもたちの成長をサポートすることも目的の一つです。
参考:気まぐれ八百屋だんだん(一般社団法人名:ともしびatだんだん)
こども食堂がSDGsに与えるメリット

はじめは子どもの貧困や孤食問題を解決するために開設された子ども食堂ですが、2015年のSDGsの採択によって、その活動意義が再注目されました。
ここ数年で子ども食堂の数は全国的に急増しています。ここでは子ども食堂の開催が子どもたちや地域に与えるメリットをご紹介いたします。
- メリット①|貧困問題の緩和
- メリット②|食育の推進
- メリット③|地域コミュニティの活性化
- メリット④|子どもの居場所づくり
メリット①|貧困問題の緩和
こども食堂では食堂へ来た子どもたちに、栄養バランスの取れた食事を無償または安価で提供しています。
子どもたちの中には経済的な家庭の事情で十分な食事を取れていない子や、共働きで家族と一緒にご飯を食べられない子どもたちも含まれています。
子ども食堂が地域の温かみのある場所として機能し、食を通して人とのつながりを生むことで、貧困の連鎖を断ち切ることに貢献しています。
メリット②|食育の推進
こども食堂ではただ食事を提供するだけでなく、貴重な共食の機会としても効果を発揮しています。
さらに会の中では「献立」や「寄付食材」について説明をすることで、子どもたちへの食への関心を高め、食育の推進にもつながっています。
子どもたちが食育を学ぶことは、その後の健康的で自立した食生活をサポートします。
メリット③|地域コミュニティの活性化
こども食堂の存在は子どもたちだけでなく、高齢者の単身世帯や地域住民にも活力を与えています。活動に参加するボランティアも、食堂での人とのつながりに生きるエネルギーを感じています。
子ども食堂の認知が広がるほど、地域のコミュニティとして大きい存在となり、その活性化に貢献することができます。
メリット④|子どもの居場所づくり
こども食堂では食事だけでなく、子どもたちが安心して過ごせる居場所を提供することで、孤独感の解消や自己肯定感の向上に繋がります。
子どものコミュニケーション機会は社会性や協調性を育て、食習慣の改善・安定にもつながっています。
子ども食堂の開催は子どもたちだけでなく、その地域にも良い影響を及ばします。食事支援の活動を中心に、地域のコミュニケーション機会を創出し、地域の諸問題を解決するきっかけの一つにもなっている将来性の高い取り組みです。
こども食堂が抱えるデメリット

こども食堂は子どもたちの支援や地域コミュニティの活性化に貢献する一方で、いくつかのデメリットも存在します。
その活動意義が認められ、急速に広がりを見せている活動だからこそ、早急な改善が必要とされています。
- デメリット①:支援が必要な子どもへのアクセス
- デメリット②:食堂の利用に対する偏見
- デメリット③:運営上の負担
- デメリット④:安全性の確保
デメリット①:支援が必要な子どもへのアクセス
こども食堂は、誰でも利用できるオープンな場であることが特徴ですが、本当に支援を必要としている子どもたちへのアクセスが難しい場合があります。
貧困家庭の子どもや、虐待を受けている子どもなど、支援が必要な子どもたちの中には、プライドや羞恥心から、こども食堂を利用することに抵抗を感じるケースも存在します。
デメリット②:食堂の利用に対する偏見
こども食堂を利用する子どもたちに対して、偏見やスティグマが生じる可能性があります。
「貧困家庭の子ども」というレッテルを貼られたり、いじめや差別につながるケースも懸念されます。
デメリット③:運営上の負担
こども食堂の運営には、資金調達、食材の確保、調理、衛生管理、ボランティアの確保など、多くの負担が伴います。
特に、小規模な団体や個人で運営している場合は、これらの負担が大きくなり、活動を継続することが困難になる場合もあります。
デメリット④:安全性の確保
こども食堂は、不特定多数の子どもたちが集まる場であるため、安全性の確保が重要です。食中毒や事故、犯罪などのリスクを最小限に抑えるための対策が必要となります。
これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、こども食堂の活動をより効果的かつ持続可能なものにすることができます。
こども食堂のSDGsを意識した実際の取り組み事例を3つ紹介

1. フードバンクとの連携による食品ロス削減(目標2:飢餓をゼロに、目標12:つくる責任 つかう責任)

愛媛県の「えひめフードバンク愛顔」では地域循環型フードバンク活動を推進しています。まだ食べられるのに廃棄されてしまう食品を活用し、その80%を子ども食堂へ寄付しています。
これにより、食品ロスを削減しながら、こども食堂の運営コストを抑え、より多くの子どもたちに食事を提供できるようになりました。また、子どもたちにも食品ロスの問題について考える機会を提供しています。
2. 地域の農家との連携による地産地消の推進(目標2:飢餓をゼロに、目標12:つくる責任 つかう責任、目標15:陸の豊かさも守ろう)

広島県広島市の「たかマールこども食堂」では、地域の農家と連携し、新鮮な地元産の野菜を食材として活用しています。
これにより、輸送にかかるエネルギーを削減し、地域の農業を支援しながら、子どもたちに旬の食材に触れる機会を提供しています。また、食育活動の一環として、農作業体験や収穫祭なども開催しています。
3. 多世代交流イベントの開催(目標3:すべての人に健康と福祉を、目標10:人や国の不平等をなくそう、目標11:住み続けられるまちづくりを)

東京都葛飾区の「えまいまキッチン」では、食事提供だけでなく、地域の高齢者や学生なども参加できる多世代交流イベントを定期的に開催しています。
これにより、子どもたちは様々な世代の人々と交流し、地域社会の一員としての意識を高めることができます。また、高齢者にとっては、社会とのつながりを感じ、生きがいを見つける機会にもなっています。
これらの事例は、こども食堂がSDGsの達成に貢献できる可能性を示しています。それぞれの地域の特徴や課題に合わせて、様々な取り組みを行うことで、こども食堂はより持続可能で、地域社会に貢献できる存在となるでしょう。
まとめ

こども食堂は、貧困や孤食に悩む子どもたちに食事を提供するだけでなく、学習支援や地域交流の場としても機能し、SDGsの複数の目標達成に貢献しています。2012年に始まり、全国に広まったこの活動は、貧困緩和、食育推進、コミュニティ活性化、子どもの居場所づくりなどのメリットをもたらします。
一方で、支援が必要な子どもへのアクセスや偏見、運営上の負担、安全確保などの課題も抱えています。しかし、フードバンクとの連携や地産地消、多世代交流イベントなど、SDGsを意識した取り組み事例も多く、地域社会への貢献と持続可能な運営を目指しています。
こども食堂は、子どもたちの未来を支えるだけでなく、地域全体の絆を深め、SDGsの理念を体現する重要な存在と言えるでしょう。