食の課題

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」が解決すべき問題点|原因や環境に与える影響について徹底解説。

食の課題

日本は、四方を「海」に囲まれた島国です。海は私たちに食料を提供し、気候を調節し、そして多くの人の暮らしを支える、なくてはならない存在です。古来より、日本人は海と深く関わり合い、その恵みを受けてきました。

しかし、近年、この貴重な海が、人間の経済活動などによって深刻な危機に晒されています。2015年国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)の目標14「海の豊かさを守ろう」では、海洋汚染、過剰漁獲、海洋酸性化、海水温上昇など、様々な問題を解決し、海の豊かさを回復させるために、国際的な取り組みを呼びかけています。

本記事では今「海」に起きている問題とそれらが地球や私たちに与える影響についてご紹介します。

この記事を書いた人
清水 みなみ

1997年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部卒。在学中は幼保小の教育環境について学び、実践経験を積むためドイツへオペア留学。卒業後は訪問介護ヘルパーとして従事し、幼少期の教育と食育が高齢期にも大きく影響していることを実感。好きな絵本は「もったいないばあさん」、子ども達のより良い学びと食事の場を提供するべく現在奔走中。

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SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」とは?

「海の豊かさを守ろう」は、持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標の一つです。地球の表面の70%を占める海は、私たちの生命を支える重要な役割を果たしています。海の生態系は、気候変動の緩和、食料の供給、そして多くの生物の生息地を提供しています。しかし、近年、海洋汚染、過剰漁獲、そして気候変動などにより、海の生態系は深刻な脅威にさらされています。この目標は、2030年までに海の資源を持続可能な形で利用し、海洋汚染を防止し、海洋酸性化に対処することを目指しています。

引用:14.海の豊かさを守ろう | SDGsクラブ – 日本ユニセフ

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」が解決する問題

地球の面積の7割を占める海。この豊かな海は地球のあらゆる命の源となっています。しかしその海が今、深刻な問題を抱えています。今この瞬間も、地球上の様々な原因によって海が汚され、海に宿る命が奪われ続けているのです。

課題①:海洋汚染

主に人間の活動によってもたらされる廃棄物(プラスチックごみ、化学物質、油など)が、川や風雨によって海へ流れ込み、海洋生物の生存を脅かしています。その中には海洋生物に直接健康被害をもたらす化学物質も少なくありません。他にも海に捨てられたプラスチックごみは、海洋生物が誤って摂取したり、絡まったりすることで、死に至るケースもあります。さらに被害は海洋生物だけでなく、マイクロプラスチックなどの目に見えない化学素材が、食物連鎖を通じて人が摂取した場合に、人体に悪影響を与える可能性なども注目されています。

課題②:過剰漁獲

過剰漁獲とは、海で繁殖し、生態系のバランスが維持されていく以上の魚を漁獲してしまうことで、魚類の絶滅もしくは致命的な減少に繋がる可能性があります。その為、漁業では一般的に適切な漁獲量の管理を行っています。しかし一方で、世界の漁業資源の30%が過剰漁獲されているというデータが示すように、一部で乱獲が行われ、多くの魚種が絶滅の危機に瀕していることも現状です。こうした乱獲は、海洋生態系のバランスを崩し結果的に漁業に携わる人々の生活にも大きな影響を与えます。

課題③:海洋酸性化

大気中の二酸化炭素が海に吸収されることで、海水が酸性化しています。その吸収量は世界全体で排出される二酸化炭素量の約1/4に相当すると言われるほどになります。

こうした海洋酸性化は、サンゴ礁の白化や貝類の殻の形成を阻害するなど、海洋生態系に深刻な影響を与えています。

ある研究データによると、このまま二酸化炭素の排出量を抑制しなければ、海洋表面の酸性・アルカリ性の強さを示す平均pH値は、21世紀末までに最大0.3低下すると予測。それが現実になれば、海の生態系に壊滅的な影響を与える可能性があると言われているのです。

海の生物の命をおびやかす「海洋酸性化」。日本と世界の実態

「海の豊かさを守ろう」が解決する課題が発生している

これらの課題が発生することには単に産業活動だけでなく、地球全体で起きている様々な要因が関係しています。ここでは主な原因3つに注目し、詳しくご紹介していきます。

原因①:乱獲

日本だけでなく、世界中で乱獲が起きている現状があります。特にマグロやタラ、鯨などの食物連鎖の上位に位置する資源ほど枯渇が指摘されています。こうした乱獲の主な原因としては、漁業の管理体制の不十分さや、水産物に対する需要の高まりが挙げられます。また、違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)も大きな問題となっています。WWFではその規制と管理強化の支援に取り組んでいます。

IUU漁業の抑制を目的とした寄港国措置協定(PSMA)

WWFジャパン| IUU漁業

原因②:陸上からの汚染

海洋汚染はその8割が陸上からの廃棄物であると言われています。その主な発生源は工場から出る二酸化炭素や油、排水、農業用排水や栄養塩類、堆積物、海洋ごみなどです。河川を通じて海に流れ込みます。化学物質を含むような工業排水は基本的に、しっかりと処理されてから排水されますが、誤って有害な化学物質が含まれたまま海に流れ出てしまったケースもあります。実際に日本でも、そういった工業排水の流出が社会的に問題になりました。

公益財団法人日本海事広報協会

原因③:気候変動

地球温暖化による海水温の上昇は主に、人間の生産活動によって排出された温室効果ガスの影響による数十~200 年程度のスケールの気候変動がもたらされます。近年の気温上昇は、地球の長い歴史を考えるとかつてない速さで起きている環境の変化であり、あらゆる生物がその変化に適応できず、種の生存に関わる影響を及ぼしています。また、海面上昇は、沿岸地域の生態系や人々の生活に大きな影響を与えています。

海の生物の命をおびやかす「海洋酸性化」。日本と世界の実態

個人でもできる!「海の豊かさを守る」ための取り組み

SGDsの目標14「海の豊かさを守ろう」は海洋資源を守り、海本来の豊かさを持続させるための目標です。海は魚だけでなく、人、動物、森、あらゆる命の源。それらを守るために、まず私たち一人ひとりにできることから始めてみましょう。

行動①:ごみを減らす

プラスチック製品の使用を控え、マイボトルやマイバッグを持参するなど、ごみの排出量の削減を意識することが大切です。

各地方公共団体でも、家庭ゴミの削減を呼びかけるキャンペーンを行うなど、ゴミの原料に積極的に取り組んでいます。

「ごみ減量キャンペーン」を開催します!|葛飾区公式サイト

行動②:環境に配慮した商品を選ぶ

海や森などの環境に配慮された商品を選ぶことを「グリーンコンシューマー」と呼びます。これらの商品には「環境ラベル」が付いており、普段利用しているスーパー等で簡単に見つけることができます。

水産資源に関する「環境ラベル」の例

・MSC認証
水産資源と環境に配慮し適切に管理された、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物であることを表す。

MSC(海洋管理協議会) | Marine Stewardship Council

・ASC認証

ISEAL(国際社会環境認定ラベル表示適正行動規範)の適正実施規範に沿って策定された基準をクリアした企業であることを表す。

The ASC label explained

こうした「環境ラベル」が付いた商品を購入することで、持続可能な漁業を支援することができます。

行動③:ボランティア活動に参加する

海洋ごみの増加は、海の水質や海洋生物に大きな被害をもたらします。海岸や河川の清掃など、地域の清掃活動に参加することで、海洋汚染防止に貢献できます。特にビーチクリーンの活動は国内でも活発に行われており、日本で唯一の海岸美化専門団体であるかながわ海岸美化財団では、ボランティアを希望される方へ、無償でゴミ袋の提供と回収を行うなど、活動をサポートしています。

国内大手企業の「海の豊かさを守る」ための取り組み事例3選

海をきれいにするのは私たち一人ひとりの課題ですが、企業もまた重要な役割を担っています。一体、企業は海を守るためにどんな取り組みをしているのでしょうか?ここでは、海洋環境保全に力を入れている国内の業界大手企業の事例を3つご紹介します。

事例①:株式会社商船三井

株式会社商船三井は、三井グループの大手海運会社です。海運業界のトップカンパニーとして、海洋環境に配慮した様々なプロジェクトや研究を行っています。例えば貨物の輸送時に行われる「バラスト水の排出問題」。これは自然の摂理に反して、海洋生物を越境移動させてしまう恐れがあります。そこで同社ではバラスト水下水処理装置」を開発し、自社グループの全保有船への搭載を進めています。

海洋環境保全・生物多様性保護 | サステナビリティ – 株式会社商船三井

事例②:三菱商事

三菱商事は、三菱グループの大手総合商社です。自社のグローバルな視点を活かし、地球環境へ配慮した積極的な取り組みを行っています。中でも「サンゴ礁保全プロジェクト」は世界各国のサンゴ礁を保全することを目指し、沖縄県の琉球大学熱帯生物園研究センターをはじめ、アメリカ、セーシェル共和国など国内外の拠点でサンゴ礁の白化現象に着目した研究を行っています。

サンゴ礁保全プロジェクト | 三菱商事 – Mitsubishi Corporation

事例③:株式会社エルコム

株式会社エルコムは環境・産業機械の開発や販売事業を行う会社です。「クリーンオーシャンプロジェクト2050」と題し、異なる4つのプラットフォームで海ごみに対する持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいます。例えば、漂着プラごみをクリーンエネルギーとして地域の補助熱源に利用する試みは、マイクロプラスチック抑制とともに、地域の観光、産業、環境に新たな付加価値向上に貢献しています。

クリーンオーシャンプロジェクト – 株式会社エルコム

海を守ることが、未来を守ることにつながる

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、私たち一人ひとりが取り組むべき重要な課題です。海洋汚染、過剰漁獲、そして気候変動など、海の生態系が抱える問題は、地球全体の持続可能性に関わる問題でもあります。ごみを減らす、環境に配慮した商品を選ぶ、そしてボランティア活動に参加するなど、私たちにできることはたくさんあります。企業もまた、サプライチェーン全体で環境への配慮を強化し、海洋環境の保全に貢献することが求められています。

プロフィール
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清水 みなみ

1997年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部卒。在学中は幼保小の教育環境について学び、実践経験を積むためドイツへオペア留学。卒業後は訪問介護ヘルパーとして従事し、幼少期の教育と食育が高齢期にも大きく影響していることを実感。好きな絵本は「もったいないばあさん」、子ども達のより良い学びと食事の場を提供するべく現在奔走中。

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