世界中で問題となっている食品(フード)ロス。日本においても問題視されており、政府だけでなく様々な企業が削減の取り組みを行っています。
特に、近年企業によるフードロスへの取り組みは、生産〜消費のほぼ全ての領域で進められています。こうした取り組みを参考に、自社でもフードロスの取り組みを始めてみてはいかがでしょうか?
本記事では、以下の内容について解説していきます。
- 食品(フード)ロスの原因
- 食品(フード)ロスに対する企業の役割
- 企業の食品(フード)ロス削減事例
また、NPO法人MOTTAIでは、食品(フード)ロス削減の取り組みとして廃棄になりそうな食材を調理して食べる「モッタイNight」を行っています。毎月開催していますので、興味を持っていただいた方はぜひご参加ください。
食品(フード)ロスとは?
食品(フード)ロスとは、本来食べられる食品が捨てられてしまうことを指します。日本では年間523万トンものロスが発生しており、環境破壊など深刻な問題を引き起こしています。(農林水産省及び環境省「令和3年度推計」)

これは、毎日1人あたりお茶碗1杯分の食べものを捨てている状態と等しいと言われています。大切な資源を効率的に活用するためにも、食品(フード)ロス削減の取り組みを行うことはとても重要です。
- 本来食べられる食品が捨てられてしまうこと
食品(フード)ロスの原因
前述した通り、日本では毎年500万トン以上もの食品が捨てられています。なぜこれほど大量に食品(フード)ロスが発生してしまうのでしょうか。
食品の生産から消費されるまでの4つの過程での原因をそれぞれ解説していきます。
- 原因①|生産段階でのロス
- 原因②|製造段階でのロス
- 原因③|流通段階でのロス
原因①|生産段階でのロス

まず、食品が作られる(生産)段階で発生している食品(フード)ロスが存在し、主に以下の2点が問題になっています。
- 過剰生産、過剰発注による売れ残り
- 規格外の農林水産物
食品の生産には、天候をはじめ、消費者の嗜好の変化や世界情勢など、生産者・小売業者の双方にとって予測が難しい要素が多くあります。
こうした中で、生産者は販売者の発注に確実に対応するために必要以上の量を生産するケースが発生しやすくなります。
また小売業者側も欠品をおそれて商品を多めに発注し、捌きれず廃棄されることがあります。さらに、味や品質に問題はなくても、見栄えが悪い故に流通段階に乗る前に廃棄に回る食品も多く存在しています。
原因②|製造段階でのロス
食品を製造・加工する過程でも食品(フード)ロスが発生しています。
- 調理くず
- 過剰製造・過剰除去
- 品質に関係ない見た目の傷や汚れ
製造・加工過程で出た調理くずの廃棄に加え、生産段階と同様に作りすぎによる廃棄や、調理工程の中で食べられる部分まで捨ててしまう過剰除去によるロスが存在しています。
また、食品の割れや欠け・パッケージについた傷や汚れを理由とした、品質に関係のない理由で廃棄になるケースもあります。
原因③|流通段階でのロス
生産者から小売業者や消費者に食品を届ける(流通している)間に発生するロスもあります。
- 倉庫や輸送中における管理ミス
- 「1/3ルール」の存在
在庫倉庫内や輸送中における保管が悪く、破損・品質の低下により販売できず廃棄されることがあります。
また、スーパーなど小売業者の商慣習で「1/3ルール」というものがあります。製造日から賞味期限までの期間全体の2/3までを「販売期限」とし、1/3を残して棚から除くするという習わしです。
その期間を過ぎても値引きなどをして最大限売り切ろうとするスーパーも増えつつありますが、まだまだ「1/3ルール」に従って販売期限で廃棄されているケースもあります。
原因④|消費段階でのロス
最後に、飲食店や家庭における消費段階のロスです。
- 食べ残し
- 飲食店での料理の仕込み過ぎや、食材の仕入れ過ぎ
- 直接廃棄(未開封の食品の廃棄)
飲食店や家庭におけるロスはイメージしやすいかと思いますが、食事の際の食べ残し、飲食店で過剰に作られた料理や余った食材、また賞味期限や消費期限が切れた・品質が落ちた際の廃棄が主な原因としてあげられます。
年間523万トンもの食品(フード)ロスのうち、324万トンつまり約6割がこの消費段階に発生しています。(環境省報告)
食品(フード)ロスと企業の役割
ここからは、これらの食品(フード)ロスに対して企業が取り組めることをご紹介します。
- 役割①|生産段階での無駄をなくす
- 役割②|製造段階での無駄をなくす
- 役割③|流通段階での無駄をなくす
役割①|生産段階での無駄をなくす
企業として出来ることの一つとして、見栄えの基準を満たさない食品の廃棄を防ぐため、それらの食品に消費者がアクセスできる場を増やすことが挙げられます。
消費者庁によれば、規格外等の農水産物を購入したことがあると回答した人は約8割に上りました。
反対に購入したことがないと回答した人は「買えるところがないから」という理由が多い結果となりました。つまり身近に販売されているところがあれば、購入する人が増えていく可能性があります。
役割②|製造段階での無駄をなくす
加工・製造段階でのロスを減らすには、原料の効率的な利用や製造工程、出荷工程の管理が重要となります。
また賞味期限を伸ばす取り組みも重要で、新たな容器包装資材の開発や、パッケージの構造を改善することも効果です。
役割③|流通段階での無駄をなくす
前に述べた「1/3ルール」=納品期限の緩和が非常に大切です。
消費者庁の報告では、飲料と賞味期間180日以上の菓子を対象に、納品期限を3分の1から2分の1したパイロットプロジェクトを行ったところ、以下の結果が明らかになりました。
- 製造業での未出荷廃棄が削減
- 物流センターで納品期限切れ発生数量が減少。返品も削減
- 小売店における店頭廃棄増等の問題はほぼない
また、該当の食品全体に拡大して試算すると、飲料は推計約4万トン(約71億円)、菓子は約1,200トン(約16億円)の削減効果が見込まれると言われています。
役割④|消費段階での無駄をなくす
外食事業者においては、消費者による食べ残しが減るような行動を促すことが重要です。小盛り・小分けメニューの導入や、注文時の声掛けで御飯や麺などの量の調整を受けるなど、必要な量のオーダーを受けることが取り組みとして考えられます。
また、残さず食べきった消費者へポイントなどのインセンティブを取り入れることも効果的でしょう。
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食品ロス(フードロス)に家庭が占める割合|個人や子供でもできる取り組みを紹介。
生産領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例
生産領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例について解説していきます。具体的には下記の2つの事例が挙げられます。それぞれ詳細に解説していきます。
- 事例①| ローソン
- 事例②|バリュードライバーズ
事例①| ローソン

ローソンでは、全国の農家・卸売業者との共同出資で自社農園の「ローソンファーム」を運営しています。
ローソンファーム各社では10%から15%の規格外野菜が産出されていますが、流通段階に乗せる前に廃棄するのではなく惣菜やサラダ・漬物などに加工して利用することで有効活用がされています。
事例②|バリュードライバーズ

食品ロス削減を狙いとしたオンライン上のプラットフォーム「tabeloop(たべるーぷ)」を運営しています。
農家や事業者は規格外などで産地で廃棄される食品などの商品を出品し、消費者はオンラインや店舗で購入できる仕組みとなっています。
製造領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例
製造領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例について解説していきます。具体的には下記の3つの事例が挙げられます。それぞれ詳細に解説していきます。
- 事例③|キユーピー
- 事例④|山崎製パン
- 事例⑤|江崎グリコ
事例③|キユーピー

卵黄だけを使用して作る「キユーピーマヨネーズ」。残った卵白はかまぼこなどの水産練り商品や、ケーキなどの製菓の原料として使われています。
さらに年間2万8千トン発生しているという卵の殻は、土壌改良剤やカルシウム強化食品の添加材などに有効活用されています。
事例④|山崎製パン

「ランチパック」の製造時に発生するパンの耳を使ったラスクを製造しています。
パンの耳の活用策は他にもあり、そこからパン粉の製造や農業用飼料にも使われており、全量が有効活用されています。
事例⑤|江崎グリコ

Glicoグループでは、高度な需給予測により過剰在庫を持たない取り組みや、商品に微細の欠け等、品質に問題のない商品をふぞろい品としてアウトレット販売することでロス削減に取り組んでいます。
流通領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例
流通領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例について解説していきます。具体的には下記の2つの事例が挙げられます。それぞれ詳細に解説していきます。
- 事例⑥|ニチレイ
- 事例⑦|セブン‐イレブン・ジャパン
事例⑥|ニチレイ

冷凍食品をはじめとした加工食品を製造するニチレイは、凍結技術の向上で削減に取り組んでいます。すぐれた急速凍結技術によって食肉の品質を損なわずに保存することが可能となり、それにより需要に合わせたムダのない販売を行っています。
事例⑦|セブン‐イレブン・ジャパン

販売期限が近づいたおにぎりやパンなどの対象商品を、電子マネーnanacoで購入したユーザーに、販売価格の5%分のボーナスポイントを付与すると取り組みを行っています。
また、手前に配置している販売期限が迫った商品を選ぶ「てまえどり」の呼びかけも行っています。
消費領域での企業の食品(フード)ロス削減の取り組み事例
- 事例⑧|アレフ(びっくりドンキー)
- 事例⑨|星野リゾート
- 事例⑩|ファミリーマート
事例⑧|アレフ(びっくりドンキー)

小学生以下のお子様を対象にした、完食応援イベント「もぐチャレ」を実施しています。
チャレンジを宣言し、注文した料理を残さず食べきるとスタンプカードになっている表彰状が貰え、2個スタンプがたまると、次回デザートがプレゼントされます。苦手な食べ物に挑戦することや、残さず食べる意識をはぐくむことを狙いとしています。
事例⑨|星野リゾート

「軽井沢ホテルブレストンコート」でのウエディングのガーデンパーティでは、披露宴の食事には珍しいキッチンカーが導入されています。
ゲストはキッチンカーに行き、希望するメニューをシェフをオーダーするシステムとなっており、その分だけ料理をするので食材の無駄・食べ残しを抑えることが可能となっています。
事例⑩|ファミリーマート

ファミリーマートでは、家庭で余っている食品を集めて、こども食堂やフードパントリーなど地域で食の支援活動を行う団体へ寄付するフードドライブを実施しており、2024年5月20日時点で3368店舗で導入がなされています。
食べきれない食品が地域で大切に活用され、食品ロス削減につながっています。
まとめ
食品の生産から消費されるまでの過程で起こる食品(フード)ロスの原因を4つの段階に分けてご説明し、それらの解決に向けた企業の取り組みを紹介してきました。まだまだ膨大な量の本来食べられる食品が廃棄されている現状にありますが、ロスは近年減少傾向にあります。今後さらに削減していくためには、すべての段階においての改善にむけた取り組みを行っていくことが重要です。
NPO法人MOTTAIでは、フードロス削減の取り組みとして廃棄になりそうな食材を調理して食べる「モッタイNight」を行っています。毎月開催していますので、興味を持っていただいた方はぜひご参加ください。その他取材や講演などのご依頼もいつでも受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
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