食の課題

発展途上国で加速する食糧問題。食糧不足が及ぼす影響と私たちにできること

食の課題

私たちが日本に暮らしていて食糧不足を感じることは少ないですが、世界には、十分な食料を得られずに苦しむ人々がいる一方で、先進国を中心に大量の食料が廃棄されているという現実があります。この食の不均衡は、特に発展途上国で深刻な問題となっており、子どもたちの未来を脅かしています。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2022年時点で世界の飢餓人口は約7億3500万人とされており、11人に1人が飢餓に直面しているという状態です。


この記事では、発展途上国で加速する食糧問題の現状、その影響、そして私たち一人ひとりができることを、具体的なデータや事例を交えながら解説します。

この記事を読んでわかること
  • 世界の食糧に関する諸問題
  • 食料問題が及ぼす「子供」たちへの影響
  • 食糧問題はなぜ起きるのか
  • 食糧問題を解決するために世界中で行われている事例3つ
  • 食糧問題を解決するために個人でもできる取り組み3つ
この記事を書いた人
清水 みなみ

1997年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部卒。在学中は幼保小の教育環境について学び、実践経験を積むためドイツへオペア留学。卒業後は訪問介護ヘルパーとして従事し、幼少期の教育と食育が高齢期にも大きく影響していることを実感。好きな絵本は「もったいないばあさん」、子ども達のより良い学びと食事の場を提供するべく現在奔走中。

清水 みなみをフォローする
CSR活動にご興味のある企業担当者様へ
CSR活動にご興味のある企業担当者様へ

NPO法人MOTTAIは、大企業をはじめ多くの企業様と連携し、10代、20代の学生を巻き込み、食品ロスや食育に関するイベントを多数実施してまいりました。

私たちの豊富な経験とネットワークを活かし、貴社のCSR活動に貢献できる、若年層向けのイベントをご提案いたします。

食育や食品ロスのイベントにご興味のある広報・PR担当者様は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

代表の菅田悠介について

世界の食糧に関する諸問題

世界の食糧問題は、単に食料の絶対量が不足しているという単純な問題ではありません。食料の生産、流通、消費、そして分配といった様々な要素が複雑に絡み合っており、その解決には多角的な視点からの取り組みが不可欠です。

問題点1|食糧不足による栄養不足・飢餓状態

食糧不足は、深刻な栄養不足と飢餓状態を引き起こします。

特に発展途上国では、慢性的な食糧不足により、必要な栄養素を十分に摂取できない人々が多く、発育阻害、免疫力低下、疾病リスクの増加など、深刻な健康被害をもたらしています。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、2022年時点で世界の飢餓人口は約7億3500万人とされており、11人に1人が食べることに苦しんでいるという状況です。栄養不足は、特に子どもたちの身体的・精神的な発達に深刻な影響を与え、将来に渡って様々な困難を抱える可能性があります。飢餓は単に空腹を満たせない状態ではなく、生命の危機に直結する深刻な問題です。

世界の飢餓は2019年から2021年にかけて急激に増加し、同水準が続いた。
橙線:飢餓人口の割合 黒線:飢餓人口 (世界の食料安全保障と栄養の現状2022(SOFI)報告書

問題点2|需要と供給バランスの崩壊

世界的な人口増加、気候変動、紛争、経済状況の変動など、様々な要因によって食料の需要と供給のバランスが崩壊しています。特に、気候変動による干ばつや洪水、異常高温などの異常気象は、農作物の生産に壊滅的な打撃を与え、食料価格の高騰や供給不足を引き起こし、飢餓の危機にある貧困状況の人々の生活をさらに苦しめます。また、先進国における肉食中心の食生活は、飼料穀物の需要を増加させ、発展途上国における食料価格の高騰を招く要因の一つとなっています。

問題点3|先進国と発展途上国の食糧問題の違い

先進国では、過剰な食料消費や食品ロスが大きな問題となっています。日本では年間約612万トンもの食品ロスが発生しており、これは国民一人当たり毎日お茶碗一杯分の食べ物を捨てている計算になります。(「食品ロス量(令和3年度推計値)」農林水産省より)一方、発展途上国では、食料生産能力の低さ、貧困、インフラの未整備、紛争などが食糧不足の根本的な原因となっています。また、先進国の食生活の変化(肉食中心など)が、発展途上国の食料生産や環境に影響を与えている側面もあります。このように、食料問題は、国や地域によって異なる様相を呈しており、それぞれの状況に合わせた対策が必要です。

実質5%の食糧価格の上昇が子どもの消耗に及ぼす影響。(IFPRI
左から:性別、居住地、貧困状況、農地所有状況、貧困状況×農地所有状況

食料問題が及ぼす「子供」たちへの影響

食糧問題は、特に子どもたちの生存、成長、発達に深刻な影響を与えます。子どもたちは大人に比べて栄養不足の影響を受けやすく、その影響は生涯に渡って残る可能性があります。

影響1|世界の4人に一人が「重度の食の貧困」

ユニセフの報告によると、世界の子どもの約4人に1人が「重度の食の貧困」に直面しており、これは、成長と発達に必要な最低限の栄養を満たすことができない状態を指します。これは単に食事の回数が少ないだけでなく、食事の内容が極めて偏っており、必要な栄養素を十分に摂取できていない状態を意味します。このような状況は、子どもたちの身体的・精神的な発達に深刻な影響を及ぼし、将来の可能性を大きく損なうことになります。

5歳未満児の死因(Hunger Free World)

影響2|成長期の栄養不足による重大な発達の遅れ

成長期の子どもにとって、栄養不足は身体的・精神的な発達に重大な影響を及ぼします。発育阻害(低身長)、免疫力低下、学習能力の低下、認知機能の発達遅延など、将来に渡って様々な困難を抱える可能性があります。特に、最初の1000日間(妊娠期間から2歳まで)の栄養状態は、その後の人生に大きな影響を与えると言われています。この時期に十分な栄養を摂取できないと、不可逆的な発達の遅れが生じる可能性もあります。

国境なき医師団では、世界的な栄養不足の現状をわかりやすく動画で解説しています。(国境なき医師団

影響3|幼い命を奪う「消耗症」の発症リスク

重度の栄養不良は「消耗症」と呼ばれる状態を引き起こし、幼い命を奪う深刻なリスクとなります。消耗症は、免疫力の著しい低下を招き、下痢や肺炎などの感染症に対する抵抗力を著しく弱めます。これにより、幼い子どもたちが命を落とすケースは後を絶ちません。消耗症は、早期に適切な治療を受ければ回復する可能性もありますが、医療へのアクセスが限られている地域では、深刻な問題となっています。

急性栄養失調の世界人口(IPCグローバルパートナーシップ
左から:急性栄養失調の6〜59ヶ月児の数、急性栄養失調の妊婦または授乳中の女性

食糧問題はなぜ起きるのか

東アフリカを中心に学校給食支援を行うNPO団体による支援の様子(TABLE FOR TWO)

食糧問題は、単一の原因で引き起こされているのではなく、複数の要因が複雑に絡み合って深刻化しています。

原因1|自然災害による農作被害

干ばつ、洪水、異常気象などの自然災害は、農作物の生産に壊滅的な打撃を与え、食料不足を引き起こします。気候変動の影響により、これらの自然災害の頻度と深刻さは増しており、特に農業に依存する発展途上国では、食糧の安全保障が大きく脅かされています。近年では、気候変動に加え、砂漠イナゴの大量発生なども農作物に大きな被害を与えており、食糧問題の深刻化に拍車をかけています。

2019年以降、問題となっているアフリカのサバクトビバッタの大量発生(National Geographic

原因2|紛争による影響

紛争は、農業生産や食料の流通を妨げ、食料不足を深刻化させます。農地が破壊されたり、農作業を行うことが危険になったりすることで、食料生産が大幅に減少します。また、道路や橋などのインフラが破壊されることで、食料の輸送が困難になり、必要な場所に食料を届けることができなくなります。避難民の増加も、食料支援の必要性を高めます。

原因3|慢性的貧困

貧困は、食料へのアクセスを阻害する根本的な原因の一つです。貧困層は食料を購入する経済力が低く、食料不足に陥りやすい状況にあります。特に、農業に依存する人々は、天候不順や市場価格の変動などの影響を受けやすく、貧困から抜け出すことが難しい状況にあります。また、教育や医療へのアクセスが限られていることも、貧困の連鎖を断ち切ることを難しくしています。

食糧問題を解決するために世界中で行われている事例3つ

世界的な食糧問題は、単に食料が不足しているというだけでなく、貧困、紛争、気候変動など、複雑な要因が絡み合って深刻化しています。この課題に対し、国際機関やNGO、各国の援助機関などが様々なアプローチで解決に取り組んでいます。本章では、その中でも代表的な事例を3つご紹介します。

事例1|国際援助機関による食糧問題へのアプローチ

WFP(国連世界食糧計画)は、食料支援、栄養改善プログラム、学校給食プログラムなどを通して、飢餓と闘っています。緊急時には食料の配給を行い、長期的な視点からは、地域社会の自立を支援するプログラムなどを実施しています。また、食料の生産性向上や市場へのアクセス改善なども支援しています。

事例2|ワールド・ビジョンによる食糧問題へのアプローチ

ワールド・ビジョンは、地域開発プログラムを通して、農業技術の向上、収入向上支援、災害時の緊急支援など、包括的なアプローチで食糧問題に取り組んでいます。特に、子どもたちの健やかな成長を支援することに重点を置いており、栄養改善プログラムや保健衛生プログラムなども実施しています。

事例3|JICAによる小規模農家向け市場志向型農業の振興

JICA(国際協力機構)は、発展途上国の小規模農家に対して、市場のニーズに応じた農業生産を支援するプロジェクトなどを実施しています。市場の需要を把握し、それに応じた作物を生産することで、農家の収入向上と食料供給の安定化を目指しています。また、農業技術の研修や灌漑設備の整備なども支援しています。

食糧問題を解決するために個人でもできる取り組み3つ

世界的な食糧問題は、遠い国の出来事のように感じるかもしれませんが、私たち一人ひとりの日々の行動も、この問題に影響を与えています。逆に言えば、私たち一人ひとりの小さな行動の積み重ねが、大きな変化につながる可能性を秘めているのです。本章では、食糧問題の解決に向けて、個人レベルで取り組める3つの具体的な方法をご紹介します。

取り組み1|支援団体への募金

食糧問題に取り組むNGOやNPOへの寄付は、直接的な支援につながります。NPO法人MOTTAIでも、皆様からの温かいご支援をお待ちしております。(寄付の方法、寄付金の使途など具体的な情報を記載)寄付以外にも、ボランティア活動への参加や、イベントへの参加なども、支援につながります。

ユニセフの収入と支出 2023年(ユニセフ)

取り組み2|食品ロス削減を意識する

家庭や日常生活で食品ロスを減らすことは、資源の有効活用につながり、間接的に食糧問題の緩和に貢献します。日本では年間約612万トンもの食品ロスが発生しており、これは国民一人当たり毎日お茶碗一杯分の食べ物を捨てている計算になります。(農林水産省「食品ロス量(令和3年度推計値)」より)この現状を変えるために、私たち一人ひとりが意識を変え、行動を変えることが重要です。

買い物前に冷蔵庫の中身を確認する

無駄な買い物を減らし、食材を使い切る計画を立てましょう。

賞味期限・消費期限を正しく理解する

賞味期限は「おいしく食べられる期限」、消費期限は「安全に食べられる期限」です。期限が過ぎたからといってすぐに捨ててしまうのではなく、状態を確認してから判断するようにしましょう。

食べ残しを減らす

食べきれる量だけ調理し、外食時も食べ残しを持ち帰るなど、食品ロス削減を意識した行動を心がけましょう。

食材を無駄なく使い切るレシピを活用する

野菜の皮や芯なども活用するレシピを参考にしたり、余った食材を使ったリメイク料理に挑戦するなど、食材を無駄なく使い切る工夫をしましょう。

フードシェアリングやフードドライブを活用する

 家庭で余っている食品を、必要としている人や団体に寄付するフードシェアリングやフードドライブ活動に参加することも、食品ロス削減に貢献する有効な手段です。

食品ロス削減啓発三角POP(消費者庁

取り組み3|フェアトレード商品の購入

フェアトレード商品は、発展途上国の生産者に対して公正な価格で取引されるため、生産者の生活向上や持続可能な農業の推進に貢献します。通常の貿易では、価格競争によって生産者が不当に低い価格で買い叩かれることがありますが、フェアトレードでは、生産者の生活が成り立つ適正な価格で取引が行われます。

フェアトレードジャパンでは、フェアトレード商品に関する動画を公開しています。(fairtrade japan

フェアトレード商品を選ぶことは、単に商品を購入するだけでなく、発展途上国の生産者を応援する行動となります。コーヒー、チョコレート、紅茶、バナナなど、様々なフェアトレード商品が販売されているので、日々の買い物の中で意識して選んでみましょう。フェアトレード認証ラベルを目印にすると、簡単に見分けることができます。

食糧問題解決のために私たちにできること

世界の食糧問題は、私たち一人ひとりの生活と深く関わっており、決して他人事ではありません。遠い国の出来事と思わずに、自分たちにできることを考え、行動に移すことが大切です。今日ご紹介した3つの取り組み(支援団体への募金、食品ロス削減、フェアトレード商品の購入)は、いずれも私たち個人が日常生活の中で実践できることです。

「もったいない」の心を大切にするNPO法人 MOTTAIは、皆様とともに、持続可能な食の未来を創造していきます。小さな行動の積み重ねが、大きな変化につながることを信じて、私たちと一緒に、世界の食糧問題解決に向けて一歩を踏み出してみませんか?ぜひ、MOTTAIの活動にご注目いただき、ご支援・ご協力いただけたら幸いです。

この記事を通して、世界の食糧問題への関心が高まり、少しでも多くの方にアクションを起こしていただけることを願っています。

プロフィール
この記事を書いた人
清水 みなみ

1997年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部卒。在学中は幼保小の教育環境について学び、実践経験を積むためドイツへオペア留学。卒業後は訪問介護ヘルパーとして従事し、幼少期の教育と食育が高齢期にも大きく影響していることを実感。好きな絵本は「もったいないばあさん」、子ども達のより良い学びと食事の場を提供するべく現在奔走中。

清水 みなみをフォローする
シェアする