食と社会

食べ残しって実際どうなの?食べ放題の仕組みから考える、食品ロス対策

食と社会

好きなものを好きなだけ食べられる「食べ放題」。この言葉に心躍る人も多いのではないでしょうか。今や、和洋中と料理のジャンルに問わず食べ放題店が存在するほど人気のサービスです。

しかしその裏側には、大量の「食べ残し」が存在しています。なんと外食産業における食べ残しは、食品廃棄物の全体の26%にもおよびます。その総量はおよそ300万tと言われています。

外食・中食産業における食品ロスについて – 農林水産省

今回は「食べ放題」の仕組みから食べ残しが発生する原因と私たち一人ひとりにできる対策について考えていきます。

この記事でわかること
  • 食べ放題店における食品ロスの実態
  • 食べ放題店の仕組みと人気の秘密
  • 食品ロス削減へ取り組む、ホテル企業の実例
  • 【MOTTAI流】食べ放題を心から120%楽しむ方法
この記事を書いた人
清水 みなみ

1997年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部卒。在学中は幼保小の教育環境について学び、実践経験を積むためドイツへオペア留学。卒業後は訪問介護ヘルパーとして従事し、幼少期の教育と食育が高齢期にも大きく影響していることを実感。好きな絵本は「もったいないばあさん」、子ども達のより良い学びと食事の場を提供するべく現在奔走中。

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食べ放題店の食べ残しはどのくらいあるの?

全国的にも増加の一途にある「食べ放題店」。そのエンターテイメント性からも高い集客力を誇り、どの街、どの商業施設にも1〜2箇所は食べ放題やビッフェ形式のレストランを見つけることができます。

とても魅了的なサービスですが、こういった飲食店では外食産業の中でも、「食べ残し」が特に多いのが現状です。例えば、某ホテルでは朝食ビッフェの食品ロスだけで年間100kgもの食品ロスが存在していました。

食べ放題というサービス形態はモーニングから終日まで、様々な時間帯で展開することが可能です。時間帯に合わせて考案された、食欲をそそるメニューもお客様を魅了するポイントの一つ。そういった店舗が全国にあると考えれば、食品ロスの総量は想像を超えるでしょう。

また、食べ放題店ではないですが外食産業全体で発生する廃棄量は300tと言われています。ただ、食べ放題店は外食産業のうちの一つでもあるため大きな影響は少なくないでしょう。

食べ放題のお店が成り立つ仕組み

「どうやったら元を取れるだろう」と食べ放題店を訪れた時に、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

一品ごとに価格が定められている一般的なレストランに比べ、好きなだけ食べられる食べ放題店はむしろお店が損をするようにすら思えます。しかし実際はそうではありません。

大量仕入れや低価格の食材を活用することでコスト削減したり、大皿料理や作り置きによって人件費を削減したり、単価を平均的な摂取量を考慮して設定しているため、もし一部のお客様が大量に食べ残しをしたとしても、全体の客数と客単価によって利益を確保しやすいように工夫されているのです。

▼一般飲食店と食べ放題店、売り上げ内訳の比較(例)

さらに「食べ放題」という魅力的なサービスは他業態に比べて、高い集客力を持っています。別業態の飲食店でも食べ放題に業態変更をするなど、外食産業の中でも人気は高まる一方です。

しかし、もしこういった食べ放題店にそれぞれ大量の「食べ残し」があれば、それはお店にとって大きな損失となるだけでなく、「食品ロス」という社会問題にも大きく影響してくるでしょう。

食べ放題店で食べ残しが発生する原因

食べ放題店で食べ残しが発生する原因としては以下の3点が挙げられます。それぞれ詳細に解説していきます。

食べ放題店で食べ残しが発生する原因
  • 原因①|「元を取ろう」という心理
  • 原因②|「あれもこれも食べたい」という欲求
  • 原因③|「見た目の満足感」

原因①|「元を取ろう」という心理

「せっかく高いお金を払ったのだから、元を取らなきゃ」という心理が働き、必要以上に料理を取ってしまうことがあります。「損をしたくない」という気持ちは、人間が本能的に持つ非常に強い心理です。

そこでお腹いっぱいに食べたという満足感を求めるだけでなく、どんな料理を食べて、どう美味しかったのか、食事を誰とどんな風に楽しんだのか、など店舗体験に注目することで、食べ放題の時間がより思い出深いのものにすることができます。

原因②|「あれもこれも食べたい」という欲求

様々な料理が並ぶと、あれもこれもと欲張ってしまい、結果的に食べきれない量を取ってしまうことがあります。加えて食べ放題店ではよりお客様の満足感を高めるために、塩味・甘味の強い料理を多く揃えている場合もあります。

自分が満足できる量、楽しめる量を見つけることも食べ放題をより楽しむ秘訣と言えるでしょう。

原因③|「見た目の満足感」

大皿に山盛りに料理を盛ることで、視覚的な満足感を得ようとしてしまう人間の心理も、食べ残しに繋がります。特に空腹時は、つい沢山の料理を取ってしまいがちです。
そんな時はお店のルールに則った上で、家族や友人と料理をシェアするのもいいでしょう。色々な味を少しずつ楽しむことができる上、食べ残しを防ぐことにも繋がります。

食べ放題店では「せっかく来たなら得をしたい」と、お皿いっぱいに食事をよそってしまう方も多いはず。お腹いっぱい食べられることは食べ放題店の魅力の一つですが、楽しみ方はそれだけではありません。せっかくなら、心にも体にも、環境にも優しく、より美味しい食事を楽しみましょう。

食べ残しを減らす取り組みや対策を紹介

食べ放題店での食品ロスはお店にとっても、環境にとっても大きな損失となります。実際に食品ロスへ課題感を持ち、提供方法の変更や食材の活用などサービス内容を見直しているお店も増えてきています。

食べ残しを減らす取り組みや対策
  • 取り組み①|小鉢に変更する
  • 取り組み②|売上予測の精緻化
  • 取り組み③|食べ残し料金の設定

取り組み①|小鉢に変更する

料理を小鉢で提供することで、少しずつ色々な料理を楽しめるようにし、食べ残しを減らすことができます。

小鉢での提供はより衛生的で、料理の見た目も崩れることがなく、利用者にとっても嬉しい取り組みです。

取り組み②|売上予測の精緻化

曜日・時間帯ごとの特性などを過去のデータから分析し、より正確な売上予測を行うことで、過剰な食材の仕入れを防ぎ、食品ロスを削減することができます。

他にも行楽シーズンや祝日、地域のイベントなど客数に関わる要素を考慮し、より無駄なく最良のサービスが提供できるように工夫をします。

取り組み③|食べ残し料金の設定

引用:八王子の焼肉・寿司食べ放題 バイキングハロー八王子店(閉店)

食べ残しに対して料金を徴収することで、お客様に食べ残しを意識してもらい、適量を注文するよう促すことができます。料理の提供量は前述の売上予測に反映され、仕入れ量などにも影響します。全体の食品ロスを削減するためには、一人ひとりが食べ切れる量を考えて取ることはとても重要です。

残念ながら、一度ビッフェコーナーに提供されたり、食べ残された食材はほとんどの場合、廃棄処分されてしまうのが現実です。

【MOTTAI流】食べ残しを減らす心がけ

ここまで食べ放題の食べ残しについてお話しをしてきましたが、実際私たち一人ひとりには何ができるのでしょうか。そこで今回はNPO法人代表の菅田氏による「MOTTAI流・食べ放題の楽しみ方7選」をご提案させていただきます。

MOTTAI 代表 <br>菅田悠介
MOTTAI 代表
菅田悠介

MOTTAI(もったい)流の食べ放題の楽しみ方について紹介していくよ

食べ残しを減らす取り組みや対策
  • 取り組み①|小鉢に変更する
  • 取り組み②|売上予測の精緻化
  • 取り組み③|食べ残し料金の設定

方法①|一口サイズを盛る

自分の食べられる量を考慮しながら、多くの種類を一口サイズずつ盛ります。様々な料理を楽しむことができ、美味しかったものをおかわりしましょう。

方法②|お腹を減らして臨む

「空腹が最大の調味料」と言われるように、お腹を減らしていただくことで料理や食材の旨みをより感じることができます。先に野菜などの食物繊維が豊富な食材を食べておくと、胃腸や身体への負担も少なく、沢山食べられるかもしれません。

方法③|見た目に惑わされない

ビッフェコーナーの大皿に盛られた料理に惑わされず、自分の心の声に耳を傾けて、本当に食べたいものを選びましょう。

方法④|みんなでシェアする

色々な料理を楽しみたい場合は、お店のルールに則った上で、家族や友人とシェアするのも良いでしょう。誰かと美味しさを分かち合い、より食事を楽しむことができます。

方法⑤|ドギーバックを活用する

お店に許可を得て、可能な場合は持ち帰りを検討しましょう。「ドギーバック」という食品の持ち帰り専用の保存ボックスもあります。

DOGGY BAG|食べ残しを持ち帰ろう!ドギーバッグ普及委員会

食べ残しを持ち帰る場合、食材の管理は一般的に自己責任となりますので、食中毒にはくれぐれもご注意ください。

これらの方法を試すことで、「元を取りたい」という欲求から解放され、より心豊かな食事体験ができるはず。ぜひ、これらのヒントを参考に、自分にとって最適な食べ放題の楽しみ方を見つけてみてください。

まとめ

「食べ放題」は様々な料理を楽しめる魅力的なシステムですが、「食べ残し」という大きな問題も抱えています。私たち一人ひとりが、食べ残しを減らす意識を持つことで食品ロスを削減する第一歩となり、外食産業にも地球にも良い影響をもたらすでしょう。

ぜひどこでも「モッタイナイ」という気持ちを忘れずに、美味しい食事を存分に楽しんでください。

プロフィール
この記事を書いた人
清水 みなみ

1997年生まれ、千葉県出身。千葉大学教育学部卒。在学中は幼保小の教育環境について学び、実践経験を積むためドイツへオペア留学。卒業後は訪問介護ヘルパーとして従事し、幼少期の教育と食育が高齢期にも大きく影響していることを実感。好きな絵本は「もったいないばあさん」、子ども達のより良い学びと食事の場を提供するべく現在奔走中。

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