美しい海を汚染し、生態系を破壊する一因として、マイクロプラスチックが注目されています。私たちの生活に欠かせないプラスチック製品が、自然環境の中で細かく砕かれ、目に見えないほどの小さな粒子となって海を漂い、海洋生物の体内に入り込み、食物連鎖を通じて私たちの食卓にも届く可能性があるのです。
海に浮かぶプラスチックごみは、もはや他人事ではありません。私たちが日々使用している多くのプラスチック製品が、海を汚染しているという現実を認識し、問題解決に向けて行動することが求められています。
マイクロプラスチックによる海洋汚染問題

この記事では、マイクロプラスチックがどのように発生し、海洋環境や人体にどのような影響を与えるのか、そして私たちにできることについて詳しく解説していきます。海を守り、未来の世代に美しい地球を残すために、ぜひご一読ください。
マイクロプラスチックは私たちが普段なんとなく使用している服、容器、化粧品、ペットボトル、あらゆるプラスチック製品から生まれています。マイクロプラスチックは間違いなく人が生み出したものであり、従来地球上には存在しえない素材です。その為、海に流れ出たマイクロプラスチックは自然分解されることはなく、地球上で行き場をなくしています。
マイクロプラスチックとは?
マイクロプラスチックとは、5mm以下の微細なプラスチック片の総称です。街から出るプラスチックごみが、風雨によって川などに運ばれて海に流れ込み、波などによって砕かれたり、紫外線で分解されたりして、小さなプラスチック片となります。
こうしたプラスチック片は目に見えないものも多く、私たちは1週間にクレジットカード一枚分ものプラスチックを食べていると言われるほど。こうして近年はこのマイクロプラスチックによる人体や環境への影響が懸念されています。
マイクロプラスチックの主な発生原因

マイクロプラスチックは発生する過程によって、以下の2種類に分類されます。
一次的マイクロプラスチック

工業的に小さい状態で生産される、それ自体が5mm以下の粒子状態のもの。
プラスチック製品: ペットボトル、レジ袋、漁具など、プラスチック製品が自然環境で長い年月をかけて微細化された場合。
洗顔料や歯磨き粉などに含まれるマイクロビーズ: これらの製品に含まれる小さなプラスチック粒子が、排水を通じて海に流出した場合。
衣類からのマイクロファイバー: ポリエステルやアクリルなどの合成繊維でできた衣類を洗濯する際に、繊維が細かく砕けて流れ出し、海に到達。合成繊維の衣類は着用するだけでも、空気中にマイクロプラスチックが放出されていることが近年発覚した。
二次的マイクロプラスチック

マイクロプラスチック問題とは?環境・人体への影響と対策を知ろう
風雨によって海に行きついたごみが、海を漂流したり、海岸に漂着などしているプラスチックが長い年月をかけて環境中で小さくなったもの。
マイクロプラスチックの発生量
現在世界中で年間数800万トンものマイクロプラスチックが海に流出していると推定されており、2050年には海洋中のプラスチックごみの重量が魚の重量を超えるという試算もあります。その量は、人の想像をはるかに超える規模であり、海洋生態系に深刻な影響を与えていることが容易に想像できるでしょう。
マイクロプラスチックが魚に与える悪影響

街や工場地帯など、各地から海へ流出したマイクロプラスチックは、海やそこで暮らす海洋生物に深刻な問題の原因となっています。それでは実際にどのような影響が考えられるのでしょうか。
誤飲・誤食の危険性
魚は、プランクトンと間違えてマイクロプラスチックを誤飲誤食してしまうことがあります。マイクロプラスチックは、魚の消化器官を詰まらせたり、栄養不足を引き起こしたりする可能性があります。
食物連鎖による影響
マイクロプラスチックを食べた魚をさらに大きな魚が食べ、食物連鎖を通じて体内に蓄積されていきます。最終的には、人間を含む上位捕食者にも影響を与える可能性があります。
海洋生物を傷つける
マイクロプラスチックには、有害な化学物質が付着していることがあります。これらの化学物質が海洋生物の体に吸収されると、生殖機能の低下や免疫系の損傷など、様々な健康問題を引き起こす可能性があります。
こうしてマイクロプラスチックの流出が、海に住む魚達を含め生態系に大きなダメージを与えています。そして漁業や観光業など、人々の生活にも様々な問題を引き起こしているのが現状です。
マイクロプラスチックが人に与える悪影響

海洋環境に大きな影響を及ぼすマイクロプラスチック。さらに怖い話で、マイクロプラスチックを食べた魚を人が食べるなどの連鎖によって、人間も摂取している可能性が十分にあります。そうした場合、人体に蓄積したマイクロプラスチックはどのような影響を及ぼすのでしょうか。
マイクロプラスチックに含まれる化学物質
マイクロプラスチックには、製造過程で付着した有害な化学物質が含まれていることがあります。これらの化学物質は、生物体内に蓄積され、ホルモンバランスの乱れや発がん性などの健康リスクを高める可能性が指摘されています。
食物連鎖による人的悪影響の可能性
マイクロプラスチックを食べた魚介類を人が食べることで、体内にマイクロプラスチックや有害な化学物質が取り込まれる可能性があります。長期的な健康への影響については、まだ研究段階ですが、無視できない問題として注目されています。
プラスチックごみを削減しよう!国内外企業の取り組み事例

こうした問題を抱えるマイクロプラスチックですが、実はすでに多くの企業が解決に向けて様々な取り組みを行っています。
事例1|マイクロビーズの使用廃止
マイクロビーズはプラスチック製の微小球で、化粧品の角質除去剤や歯磨き粉などのパーソナルケア製品に広く使われていました。しかし、もし廃水中にそのまま廃棄された場合、マイクロビーズに含まれるプラスチック粒子は濾過されずに下水処理場を通過するため、水質汚染につながるとされています。マイクロビーズの使用は世界レベルで徐々に禁止されてきており、株式会社マンダムでは一部製品についてマイクロビーズの使用廃止(代替原料化)を完了しています。

事例2|マイクロファイバー発生を抑制する洗剤
アパレル世界大手のInditex社は、マクロプラスチック問題の観点から、アパレル製品の洗濯中に発生するマイクロファイバーを抑制できる洗剤「Laundry by Zara Home」をBASF社と共同開発しています。こちらは2022年より欧州を中心に25ヵ国で販売を開始しており、今後市場にも展開予定。合成繊維で作られた洋服を着用・洗濯すると発生してしまうマクロファイバー。世界的なアパレル企業の多くがこの問題に取り組んでいる。

Joint News Release – Inditex and BASF
事例3|プラスチック製品の削減とリサイクル
スーパーマーケットや飲食店などの食品業界も、プラスチック素材が多く使用されている業界の一つ。イオン株式会社ではこうした使い捨てプラスチックの削減に取り組み、レジ袋の提供終了、プラスチックカトラリーの削減などを行っています。併せて食品の販売容器などプラスチック包装材のリサイクル回収箱を各店舗に設置し、資源の活用を推奨しています。

食品ロス削減とマイクロプラスチック対策、今私たちにできること

2018年6月に発表された国連環境計画(UNEP)の報告書「シングルユースプラスチック」によると、日本は1人当たりの使い捨てプラスチックごみ廃棄量は32kgと米国に次いでなんと世界第2位。私たち1人ひとりがプラスチック削減のために行動することが、今強く求められています。
行動1|マイボトル・マイバックの使用
日本では、年間約300億枚のレジ袋が消費されていると言われており、これは乳幼児を除いて一人につき年間約300枚も使用していることになります。繰り返し使うことのできるマイボトルやマイバッグを持参することで、ペットボトルやレジ袋の使用を減らし、プラスチックごみの発生を抑えることができます。
行動2|ごみの分別
プラスチック容器包装をはじめ、ごみはリサイクルに出すなど資源化することによって環境問題全般に貢献することができます。他にも、街から出たごみが風雨などによって河川に運ばれれば、マイクロプラスチックの発生源となります。出先で出たごみは持ち帰り、家庭ごみと合わせて分別し回収に出すといった習慣をつけることが大切です。
行動3|買わない・使わない
新たなプラスチックの製造を削減するために、購入品の選択を見直しましょう。計画的に買い物をし、不要な製品を購入しなくなることは家計の節約にもつながります。
こんな取り組みも!「プラスチック・スマート」キャンペーン
環境省では「プラスチック・スマート」と称したキャンペーンを実施しています。プラスチック・スマートでは、個人や企業など幅広い主体から募った取り組みを集約し、例えば以下のような“プラスチックとの賢い付き合い方”を全国に推進しています。
・ポイ捨てや不法投棄撲滅の徹底
・ワンウェイプラスチック(一度使用したら廃棄するプラスチック)の排出抑制
・分別回収の徹底

持続可能な未来のために、今私たちがすべきこと
マイクロプラスチック問題について、関心を持ち、私たちにできることについて考えることは私たちの人生を豊かにすることにも繋がります。上手に環境問題と向き合い、無理せず、自分らしくライフスタイルに落とし込んでいくことが大切です。
マイクロプラスチック問題は、私たち一人ひとりの行動がやがて大きな影響を与える問題です。プラスチックごみの削減、リサイクルの推進、そして環境に配慮した製品を選ぶなど、私たちができることはたくさんあります。未来の世代のために、美しい海を守り、持続可能な社会を築いていきましょう。